Report no.8 / “カマレポ・カフェ” 映画『小さき声のカノン』未公開映像集

ベラルーシの「保養」を福島の子どもたちに
Report no.8 / “カマレポ・カフェ” 映画『小さき声のカノン』未公開映像集
トーク:鎌仲ひとみ

 『ミツバチの羽音と地球の回転』『六ヶ所村ラプソディー』など、原子力エネルギーと闘う市民の切実な声に寄り添ったドキュメンタリー映画で知られる鎌仲ひとみ監督。今年5月に公開となった話題の最新作『小さき声のカノン』では、原発事故を経験した福島、そして、29年を経てもチェルノブイリ事故の影響が残るベラルーシの両地域から、子どもたちの健康問題に心を痛める母親たちの今を追いかけています。3年半に渡った撮影で撮りためた映像は400時間にも及んだことから、当然劇場版の本編には入れることができなかったシーンも膨大な量に。やむなくカットとなってしまったものの、貴重な声をできるだけ多くの人に届けたいと制作されたのが、未収録映像を収めたDVD「カノンだより」(PHOTO1)です。

 カマレポ・カフェとは、被ばくのことが気になるけれど、勉強会やイベントを開催するのはちょっとハードルが高くて―と考える人たちに、鎌仲監督のDVD作品を身近な場所で上映してもらい、気軽に意見交換する機会をつくるおしゃべりカフェのこと。この日、エシカルファッションカレッジの授業の一環として開かれたカマレポ・カフェでは、4巻に渡る「カノンだより」から選ばれた短編3本が紹介されました。うち2本は福島の2家族を追ったもの。子どもたちの体調悪化が目に余り、新潟に自主避難せざるを得なくなった磯貝潤子さんが辛い胸の内を語る「母であることーその思い」、そして、人気コミック「美味しんぼ」の中で「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」と発言し、多方面からのバッシングにあってしまった荒木田岳・福島大准教授に当時のいきさつや今後を聞いた「言葉ではなく生き方で~荒木田さんの場合~」。原発事故に振り回されながらも前に進もうとする両家族の選択や生き方に力強さを感じると同時に、年間被ばく線量が20ミリシーベルト以下であれば健康上大きな問題はないと国が判断した日本では、低線量被ばくの不安を声高には訴えにくい地元の息苦しさも伝わってきました。最後の映像はチェルノブイリ事故の際に日本で保養していたベラルーシの子どもたちを集め、当時の保養体験や今の思いを聞いた「保養体験女子会@ベラルーシ」(PHOTO2)。「今度は私たちが日本の人たちを受け入れる番」と、出演した女性たちが自らの体験を踏まえ、親身に福島の女の子たちを励ます言葉を送っていたのが印象的でした。

 体調が悪化した子どもたちの健康を取り戻すため、未公開映像でも繰り返し出てきていたキーワードが「保養」。子どもは新陳代謝が活発なので放射線量の低い土地に出向いて一定期間過ごせば、体内の放射性物質の排出を促すことができるのだそうです。「ベラルーシでは、国が年間被ばく線量1ミリシーベルトを超える地域の学校すべてに保養を義務づけていて、対象年齢も日本のように小さな子どもばかりでなく、3歳から18歳までと決められている。私、日本でもこの保養を広めたいと思っているのよね」と鎌仲監督(PHOTO3)

 「福島では保養という言葉に過敏な人も多いから、スポーツ合宿とか何らかの付加価値をつけてやるのもいいと思うし、財団を作ってここの学校みたいにオシャレで、楽しいことをやれたらいいよね」などという監督の提案に、具体的にどのようなアプローチが福島の人たちの心に響くのかを熱心に尋ねる参加者の姿も(PHOTO4)。最後に、鎌仲監督は国内で行われている様々な保養事業への支援を呼びかけていました。

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PHOTO4
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PARTICIPANT COMMENTS

佐藤夏実さん

佐藤夏実さん(江東区、大学生)

福島へは震災後に行ったことがなく、だいぶ復興したかなと思っていたので、今日見たことは本当に知らないことばかりでした。ベラルーシが保養期間を21日間以上と定めていると聞きましたが、今看護や保健の勉強をしているので、その必要性を裏付ける医学的なデータについても気になりました。福島では保養がお母さんたちの力量にまかされてしまっているので、本来なら行政主導で、学校も協力体制を整えて、みんなが平等に行けるようになるといいですよね。

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