Report no.7 / たべもののエシカルを考える - 日本の食はエシカルか?

激安はほんとうにエシカル??
Report no.7 / たべもののエシカルを考える - 日本の食はエシカルか?
講師:山本謙治

 全国津々浦々の農家や加工業者を丁寧に取材し、日本の農業や食品業界の構造的な問題を鋭く指摘してきた農産物流通コンサルタントの山本謙治(やまけん)さんが初登場した今年のエシカルファッションカレッジ。日本のエシカルは主にアパレル業界で聞かれるキーワードになっていて、エシカルファッションカレッジでも衣食住の「衣」が、強調されてきました。やまけんさんは、「今日はアウェー感たっぷりでやって来ましたが、僕は日本の食のエシカルについて常々話したいと思っていたので、この機会をいただけたことをとてもうれしく思っています」とあいさつ。やまけんさんの講義は、日本人がエシカルを考えるときにまず思い浮かべるフェアトレードやオーガニック、児童労働といった問題からも少し離れ、私たちの暮らしにもっと身近な、地域のスーパーなどで売られている食の「価格」に潜む問題点を深く掘り下げるものとなりました。

 現在、北海道大学の博士課程で「エシカルな食をどのように日本に根付かせるか」を研究していると話すやまけんさんは、2008年に著書『日本の「食」は安すぎる』を出版(PHOTO1)。全国の食の生産者や加工業者、中小メーカーと仕事をするなかで彼らの置かれた境遇や本音に触れ、常々疑問に思ってきたことは「なぜ日本は食を安く買いたたくのか」だと言います。モノがあふれている日本では、大量に買い付ける口実を得た買い手の方が圧倒的に有利な立場となり、売り手とのパワーバランスが崩壊してしまっているのだそうです。

 EUなどのように業界団体が連携をとって適正価格を交渉する余地もなく、言われるままの安値にあえいでいる例としてやまけんさんが示したのが卵と納豆。やまけんさんはまず、2年前に卵の生産者団体が主要紙に一斉に掲載した意見広告「卵の未来を、助けてください」を紹介。昭和20年代頃から10玉パック200円程度で推移し「物価の優等生」と言われる卵ですが、実は卵を生食する日本の食文化は世界的にも珍しく、生食を可能にしている衛生管理基準は世界随一のレベル。しかし、これ以上の安値になれば、もはや衛生管理のレベルを下げざるを得ないという悲痛な訴えが掲載されたものでした。また、やまけんさんが値段の推移を注視しているという3個パックの納豆も、ここ7、8年ほどで150円程度から100円以下にまで価格が落ちている食品。やまけんさんは店頭価格の試算内訳を表で示し、適正価格と思われる160円だとしても、納豆業者の利益は小売り業者の67円より少ない50円程度。しかも業界の慣習として、物流センター使用料としての“センターフィー”や、扱う店舗を割り振る“ピッキング料”などを上乗せされ、結果的な利益は小売業者よりもずっと少ない額になると解説。「皆さんが特売で見る納豆価格は大体80円くらいでしょう。それだと納豆業者の利益は1パック13円程度。確実に赤字ですよね」(PHOTO2)

 やまけんさんは「こうしたエシカルでない話に加担しているのは、実は消費者とも言える。店頭価格はそれで生産者が儲かっていると思ってしまうけれど、そうではない。安いものを買いたい気持ちは消費者の権利だから仕方ないけれど、安値が度を超えてしまっている」と鋭く指摘します。食品業界の知られざる構造の話に聞き入る受講者に向け、やまけんさんは最後に「売り場で安過ぎるのは良くないと皆さんが声を上げることが、やはり一番効果がある。欧米ではみんな堂々と声を上げています。日本の食をエシカルにするのは、消費者である皆さんだと思う」と繰り返し強調していました。食の価格を巡る問題の根っこには、実は一人ひとりの消費行動が大きくかかわるとするやまけんさんの主張は、受講者の心に少なからぬインパクトを与えたようでした(PHOTO3)

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PARTICIPANT COMMENTS

渡辺紀貴さん、山本早紀さん

山本早紀さん(大田区、会社員)、渡辺紀貴さん(静岡県、フリーIT 関連)

実は静岡にいる両親が農家で、消費者とつながりを持つために食のイベントなどをやっているので、今日の話は共感できるところも多かったです。(山本さん)
消費者と生産者とのかかわりのなかでの食というのは、あまり考えたことがありませんでした。欲しいものは高くても買うと思うし、安ければいいという話でもないと思う。うちの母親も最近、大豆が安くなって味が落ちたと食べなくなった。納豆の値段の話は驚きました。(渡辺さん)

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