Report no.13 / 映画『ヴァンダナ・シヴァのいのちの種を抱きしめて』

インドに学ぶ、種の命の守り方
Report no.13 / 映画『ヴァンダナ・シヴァのいのちの種を抱きしめて』
トーク:渡邊智恵子、辻信一、成田由香子(5月10日上映会)

 エシカルファッションカレッジで2日間に渡って上映されたのが、ドキュメンタリー映画『ヴァンダナ・シヴァのいのちの種を抱きしめて』。インドの環境活動家、科学哲学博士として知られるヴァンダナ・シヴァさんを、環境共生型の暮らしやビジネスを提案する“スロームーブメント”をけん引してきた環境活動家の辻信一さんがインタビューした貴重な映像で、600種を超える作物の多様性が確保されたインド北部ナヴダーニャ有機農場ののどかな風景の中、彼女が自身の生い立ちや1987年から取り組んできた環境運動への思いを熱っぽく語る姿(PHOTO1)が印象に残ります。

 連日とも児童労働問題に取り組むNGO ACEの成田由香子さん(PHOTO2)が上映前の作品紹介を行い、上映後のトークには日本オーガニックコットン協会の副理事長を務めるアバンティの渡邊智恵子さんが登場。10日の回には、作品のディレクターである辻信一さんも姿を見せました。世界有数の綿の生産地として知られるインド綿は今や95%が遺伝子組み換え綿(Bt綿:殺虫毒素Bt菌が導入されたコットン)とされ、栽培に大量に使われる農薬による健康被害や環境汚染、自殺や児童労働の増加を招き、深刻な状況にあると言われています。

 遺伝子組み換えの作物は、開発したグローバル企業の「発明」として知的所有権が認められ、農家が種をつくること、自家採取することを禁じています。そのため、毎年種を買い続けなければいけなくなるのです。水や空気と同じく、種のように生きる上で不可欠な共有資源が世界の一握りの企業の知的財産となってしまう矛盾を断固非難し、故郷に有機農業の研究と実践を行う農場を作り、農民が種を採る自由を守る活動に力を注いできたヴァンダナ・シヴァさん。渡邊さんは映画を通じて彼女の活動と生き方に魅せられ、もっと多くの人に広めたいとこれまでも様々な形での上映会を企画してきたと言います。

 上映後のトークでは、26年間オーガニックコットンとかかわってきた渡邊さんが、明治期に日本が初めてコットンを輸入したのが実はインドからだったと両国間の歴史を紹介(PHOTO3)。輸入の道筋をつけ、紡績を日本の主力産業に押し上げた実業家・渋沢栄一の話から、辻さんも「ビジネスを『実業』と訳したのは彼。嘘をついたり、ごまかしたりする“虚業”に対し、自分たちの倫理感をとことん鍛えて本物の生業をやろうと奮起した。そう言えば、今フェアトレードとか持続可能な産業と言っているのは、みんな実業のことだよね」と指摘(PHOTO4)。辻さんは、ヴァンダナ・シヴァさんは種だけでなく、水や空気、土、エネルギーなどについても著作があると紹介し、「こうした生命に最低限必要な資源、bottom lineまで金儲けに利用するのは虚業の極みだよね。やってはいけないこと」と語気を強めていました。渡邊さんは、「今日見ていて思ったのは、種は命であるという認識は共有すべきだということ。次の年に芽が出て、きちんと命をつなぐことができるのが種。遺伝子組み換えは、そういう意味では種ではない」。辻さんも「そうだね。しかも遺伝子を組み換えて命の基本を操作しているのだから、生態系にどういう影響がもたらされるのかもわからない。我々はある意味、誰もが次の世代の母親。そういうところにいつも疑問を感じていなければいけないね」とうなずいていました。

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PARTICIPANT COMMENTS

佐々木知子さん

佐々木知子さん(神奈川県、主婦)

仕事の関係でヴァンダナ・シヴァさんのことを知り、彼女の著作もいろいろと読んで的を得ているなと感じていたので、ずっと見たいと思っていた映画でした。種の危機というのは、実際に農業にかかわる人でもないと実感が湧かないのではないでしょうか。本で種子バンクの話を読んだときは全然イメージが湧かなかったのですが、映像で本当に人の手で種を集めて保存している様子がわかって興味深かったです。自分の生まれた土地に農場を作って、種を集めることを実践しているのがすごいですね。

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